なぜマニュアル作成が浸透してこなかったのか
ひと昔前はマニュアルというワードは”マニュアル人間”など、言われたことしかできない人間の代名詞として揶揄されてきました。
しかし、最近は人手不足並びに業務の複雑化、人事労務分析、SNSを含むITの進化によりマニュアル作成の重要性が高まっています。マニュアル作成専門の企業があちこちにあるくらいです。
そもそもなぜ今まで中小企業においてマニュアル作成の重要性が浸透してこなかったのか、様々な企業と人事労務面で関わってきた私なりに考えてみると、
そもそもマニュアルがない。作ってる暇がない。
コミュニケーションやセンスで無難に仕事を進められる人が重宝されてきた
従業員が辞めてもすぐに新しい従業員を補充できた
中小企業でマニュアル作成が浸透してこなかったのは、この3点が大きかったのでは?と感じております。
気持ちはわかります。日頃色々と忙しい社長が従業員に細かいことまで指示を出している余裕なんてありません。そうなると100%やるべきことが伝わってなくても、特に指示が必要なく50~60%の力量で無難に仕事をしてくれる人材というのは助かります。同時に社長が求める労働生産性も落ち着いてしまいます。
頭のトレーニングをサボってしまう人にマニュアル作成は難しい
人間は楽をしたい生き物です。どうせ変わらない給料ならばずっとそのままでいい。と考えている人は大勢いるのではないでしょうか。早々と自分の居場所を探し出し、その席に留まり続けている人も大勢いることでしょう。
そのような方々はマニュアルなんて絶対作りません。精巧なマニュアル作成の結果、自分の立場、居場所が無くなってしまう可能性がありますから。これでは労働生産性が上がりません。
複雑化してきた世の中において、組織を大きくしていくためには、最終的に人間の力ですから、”勉強することが苦ではない、勉強を継続できる人”の確保が必須になります。これは別に難関高校大学出身者に限定するわけではなく、簿記検定等の資格取得者でも構いません。世の中には様々な資格がありますし、特定の学問を追求した経験がある方も該当します。
頭のトレーニングをしてきた人に何が必要かということ
頭のトレーニングをしてきた人が最初に何をするかというと、とりあえずやってみるではなく、”まずは頭で業務をインプットする”という当たり前のことをします。
”仕事は見て覚えろ”、”仕事をやりながら覚えろ”などという社風の企業は勉強をしてきた人たちからすると理解不能なのです。わけの分からないことで怒られ、ストレスが溜まって辞めていきます。会社は昔はよかったのです。すぐに人が補充できたから。今は違います。人手不足でさらにはSNSで不評を拡散される恐れがあります。
ここでマニュアルなんか作ったらそれしかできないのでは?という意見もあります。私はそれこそ企業の見せ所なのではないですか?と伝えます。仕事以外もそうですが、最初にある程度、道しるべを作ってあげることが重要だと思っております。”その会社で何ができるのか、できるようになるのか”も盛り込んだマニュアル作成が必須になります。各々が自身で考え、試行錯誤して仕事が面白くなっていくのはそれからではないかと私は思います。残念ながら、”他にやりたいことが見つかった、他の会社なら実現可能”などの理由で離職してしまうケースも出てくる可能性がありますが、私なら人事労務を踏まえた対策なんていくらでも考えられますし、そのような理由で離職者が出る頃には企業としてのレベルが確実に上がっていることを実感できているはずです。