サラリーマンの年齢による変化

人事の話

年の功という言葉が通じなくなってきた

普通のサラリーマンならば40代も半ばを過ぎると、同期入社の出世頭とは差が目立ってきて、社内での自分の行きつく先もある程度見えてしまいます。

自らが思い描いていた理想と現実のギャップに“なんで?”と悩むこともあるのですが、
そんな悩みは周りの人間や奥さんに愚痴るわけには行きません。
一人で心ひそかに溜めておくことになります。サラリーマンの辛いところです。

でも、心に悩みを抱え込んでいるので会社に来てもイマイチ気分が乗りません。そればかりか、溜め込んだストレスにより心の底のイライラ感も増幅してしまい、ちょっとした部下の言動も気にさわって、かっとなってしまうのです。
社内でよく怒鳴っている上司を見かけますが、そういう人は、きっと心に何かのストレスを溜めこんでイライラしているのかもしれません。

人事でのえこひいきは上司としてNGですが、人間ですから上司といえども好き嫌いはあります。
「かわいい部下」と「いけすかない部下」が居たとするとき、「かわいい部下」が遅刻しても“しょうがねえなあ”と思う程度ですが、「いけすかない部下」が遅刻すると、“あのバカ、なに遅刻してるんだ”と腹が立つのです。つまり、部下の“遅刻”という出来事自体は、怒りとは関係がありません。「いけすかない部下」を怒るためのアラ探しを心秘かに日頃行っていて、それが見えた瞬間「待ってました!」とばかりに怒り、キレるというわけです。

今は、パワハラやら○○ハラが厳しくて中々部下を怒鳴るのは憚られるのですが、つい数年前の私が事業会社に勤務しているときはそんな気遣いなど全くなく、上司は「鉄は熱いうちに打て」とばかりに、職場で怒鳴りまくっていました。然し今時の部下は、上司に怒鳴られても昔みたいに下を向いて黙っては聞いてはいません。怒鳴った方が効き目がある的な上司のやり方は、中々通じなくなってきました。

勿論今でも、部下がミスをした時に、つい“キレて”しまう上司はいます。
そしてそういう上司は、怒る際に“なめているのか”とか“何度言えば分かるのか”とかの刺激的な言葉を使いがちです。そのため、怒られた部下も納得できずに言い訳や反論に転じて議論に発展したり、中にはショックを受けた部下がメンタル不調に陥って更なる問題につながってしまうことも少なくありません。

そして場合によっては、注意をした上司がパワハラを行ったと認定されて、処罰を受けたり、部下が会社をやめてしまってその責任を追及されてしまったりするケースも出てきました。実に「上司は辛いよ」の時代となってしまったようです。

近年、キレる中高年サラリーマンが増えているのは時代的な側面が関係しているとも言われています。
終身雇用や年功序列制度がハッキリしていた時代は、年を重ねるごとに給与や役職が上がり、年功を重ねた社員は周りからも敬意を払われるという不文律が存在していました。

しかし現在では、終身雇用や年功序列制度が崩れ出し、ITやAIなどが理解できなければ「無能」のレッテルを貼られかねない時代になってしまいました。

加えて、昔はいわゆる『年の功』というものもありました。社歴を重ねれば自然と仕事に関する知識量も増え、周りから何かに連れて質問されたり、頼られたり、尊敬もされていたのです。しかし、現代では経年による知識の積み重ねがものを言う時代ではなくなりました。

精神科医の分析では、「キレる人」の心には、怒っても反撃できそうもない人を見つけると『チャンス!』と映り、そしてその相手がミスなどをした瞬間に『さぁオレの日頃の怒りをぶつけよう』といった無意識の構造が働くそうです。
そのため部下や駅員や窓口の係員など、反撃されそうもない人にキレることになるんだそうです。

確かに、駅員には簡単にキレる中高年や高齢者も、相手がヤクザ風で怖そうな人の場合、その人がどんなマナー違反をしたとしても、口の中でもごもご言ったとしても、決してキレたりはしないでしょう。

それはヤクザ風の人のマナー違反を見たとき、心の中で一瞬に「キレたら倍返しで反撃されるかもしれない」と計算し、それを恐れて『チャンス』とは映らないのだそうです。

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