小説(自伝)「潜水服は蝶の夢を見る」ジャン・ドミニック・ボービー

本の話

寝たきりになってしまった作者による自伝

 今回は小説というか自伝の話です。みなさんは寝たきり、いわゆる植物人間になった方の気持ちを考えたことはあるでしょうか。私は残念ながらありませんでした。

 実際、身内に寝たきり患者がいる、医療従業者、介護従業者の方などでなければイメージしにくいだろうと思います。

 寝たきりになると意思疎通が困難になります。作者のジャンさんは世界的なファッション誌の編集長でしたが、脳出血で倒れて、身体的自由を奪われてしまいました。その中で唯一動く左目の瞬きだけで介助者の助けも得ながら執筆しました。

 本書により寝たきり患者の心を垣間見ることができます。相当優秀な方のためか、表現のレベルが高く理解できない箇所も多々ありました。

 潜水服というのは作者の物理的、身体的な不自由の象徴であり、蝶というのはその中で自由に飛翔することのできる、創造力や思い出、洞察や希望といった心の声ではないかと訳者は語っています。表現のセンスがすごいです。おそらく日本人では思いつかないでしょう。

 寝たきりのため介助者により淡々と扱われる作者の虚しい心の声も描かれています。人の気持ちを考えることは時に間違いもあるかもしれないが、止めてはならない、とても重要なことだということを教えてくれると本書だと思います。おすすめです。

 

 

本の話
スポンサーリンク
勝手に人事労務分析.COM
タイトルとURLをコピーしました